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学びのフロンティア

四天王寺高校・中学校【第3話】
親の関わりが学びを変える 学校をつながる場に

毎日新聞社

 四天王寺中学校は、保護者の関わりに特徴がある。授業を参観するだけでなく、生徒が進路を描くモデルとして講師を務めたり、文化祭を盛り上げる主体として働いたりする機会がある。そこには義務的な空気はない。子どものため、そして自分のためにできることを楽しむ姿がある。【安部拓輝】

親の働き方に教師も学ぶ

 同校では2022年度から保護者が自身の職業について語る会が始まった。協力を募り始めて3年目。これまで延べ20人から協力の申し出があり、毎年数人ずつ中2、中3の生徒たちに講話している。税理士や公認会計士、幼稚園の経営者や人材育成業、土木設計コンサルタント、鉄道、メディア関連……。友人の父や母が働くリアルを語る時間は、学校の外に広がる社会への視野を開く糸口となっている。

自身の職業について生徒たちに語る保護者=同校提供

 一人の教諭の発案がきっかけだった。同校の英数Sコースは多様な進路を想定している。中村賢治教諭は、生徒たちの職業観を広げようと外部から講師を招くことを検討したが、立ち止まって考えた。「大学を卒業してすぐに教員になった私が講師を選んでも、生徒が思い描く職業と大して変わらないのではないか」。そこで中村教諭は2年生の1学期、79人いる生徒の保護者に連絡網で協力を呼びかけてみた。
 すると、6人から協力の手が上がった。講話ではそれぞれが生徒に分かりやすいようにスライドを準備して語る。父が登壇した生徒に感想を聞いた佐川みなみ教諭は「自分の父がどんな仕事をしているのか初めて知ったと話していました。家庭で職業について話すきっかけになればと思います」。
 家が職場でもない限り、生徒たちは親が誰のためにどんな人たちと働いているのか知る機会がないまま進路を開拓する。中村教諭は「職業の名前は知っていても、それぞれの仕事がどうつながって成り立っているのかまでは私もイメージできていなかった。毎回のお話から社会がつながっていくのがとても新鮮です」とも話す。例えば、病院で働く人といえば医師や看護師、薬剤師が思い浮かぶが、そうした病院事業は会計・経理や医療機器の技師たちがいなければ成り立たない。それぞれの現場で働く人たちが誰のために、誰と連動しているのかという視点で聞くことで、職業観に横展開が生まれるのだ。

教科書だけでは学べないリアル

 製薬会社に勤める母親 は、開発した薬を小動物に投薬して効果を実証する業務や、効能を医師らに伝えて契約を結ぶ業務などを積み上げていった先で新薬が患者の手に届くことを伝えた。中村教諭は「動物で実験している事実を知らない生徒は少なからず衝撃を受けていましたが、私たちの病気を治す薬は動物たちなしには創り出せない。現場で働く生の声は、教科書に書いてあることを深く考えるきっかけになります」と語る。
 思いを率直に語りかける保護者からは、表向きの職業イメージだけではなく、仕事で直面している課題や、やりがいを感じる瞬間を伝えて興味を持ってもらう貴重な機会だという声も寄せられている。保護者の数だけ多様でリアルな働き方がある。その日その年の講話に終わらせず、進路を描き始める後輩たちの資源として蓄積していくことが、中村教諭らの次なる探究課題だ。

文化祭に「おやじ」が参画

 文化祭では新たな試みが始まった。これまでも母親たちがマドレーヌやどら焼きなどを販売して学校に寄付していたが、2025年に新たに登場したのは「親父(おやじ)横町」。父親たちの企画だ。おそろいの黒いTシャツには「俺たち甘いだけじゃねえ」と書いてある。家で娘に言えないことを背中で語り、駄菓子とプチコスメを混ぜたプールからスコップ2杯の取り放題という赤字覚悟の非常に「甘い」企画を展開した。

背中で自己主張する父親たち=同校提供

遠慮せずにパパも自己実現

 女子校でもあり、保護者後援会で活動するのは大半が母親。娘が中2の時に会に加わった田淵慎哉さんは「父親は遠慮するところがありました」。懇親会で後援会メンバーに文化祭の企画案を話してみると、盛り上がった。保護者メールで参加を募ったところ、45人も手が上がったという。当日は娘たちが友達と一緒に恥ずかしそうに来店し、ハイテンションで楽しんでいた。
 「娘の世界が共有できて家での会話も増えました。本当にやってよかった」と田淵さん。「パパ友」が生まれ、何度も懇親会が開かれている。田淵さんは、居酒屋で娘のことや仕事の話を交わすパパの輪の中で「みんな、これを求めていたんだよな」と思う。PTA活動が先細っていく話を耳にするが、やりたい人はいる。子どもが思春期を迎えても、親は親でつながる機会を求めているのではないだろうか。田淵さんは「親父横町はパパがつながるきっかけでした。子どものために、自分のために、やりたいことが実現できる場にしたい。来年が楽しみです」と語った。(おわり)

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