インタビュー
なぜいま中学受験か
【第3話】私学の自己変革
中学の部活動を事例に
毎日新聞社
学校との切り離しが進む部活動に私学がどう対応しているのか。浜学園の松本茂学園長と日能研関西の森永直樹取締役(以下、敬称略)へのインタビュー第3話は、私学の自己変革がテーマ。何を守り、何を変えるか。学校の特色とは何かを考えました。【安部拓輝】
■自校の部活を維持する工夫
中学校の教員の負担軽減策として、自治体が部活動の地域移行を進めています。私学はこれにどう対応しているのでしょうか。
森永
神戸市は、2026年に公立中学校の部活動を終了して「地域クラブ活動」に移行させます。他府県の公立校でも移行が進んでいます。校区に関係なく、生徒が多様な活動から「やりたいこと」を選べる環境を確保する狙いがありますが、公共交通が乏しい地域では神戸と同じようにはいきません。学校のグラウンドは空いているのに電車でクラブチームの練習に通うことが必要になっています。

学校教育は授業だけじゃない。人間形成の部分で部活動が担う役目はすごく大きいです。放課後まで勉強して部活やって帰る。学業との両立ができる子が将来やっぱり成功できるという期待はあります。私学でもこれは大きな課題ですが、中高一貫の私学の場合はほとんどが部活動を切り離さずに維持します。地域移行に参入する学校も一部にはありますが、働き方の工夫によって課題を乗り越えようという取り組みも見られます。クラブを多く持つ先生の負担が大きくなる場合は出勤時間を少し遅くするなど働き方を柔軟に変えていけるのも、私学ならではと思いますよ。

■現場で早い意思決定
先生の負担軽減というだけではなく、生徒のやりたいことも守る視点も両立させる「働き方改革」を試みているということですね。
- 松本
学校や先生が自己変革できる環境は不可欠な要件だろうと思います。公立は教育行政の制度枠組みの中で動いていきますから現場の先生の判断では変えにくいですが、私学の場合は校長先生がゴーサインを出せばすぐに動き出せます。少子化が進む先を見据えて危機感を持って学校経営されている私学ほど変わるのは速い。もちろん建学の精神に基づく理念は受け継いだ上で、時代のニーズをキャッチアップする現場の先生の意識は高いように思います。
- 森永
オンラインの情報ツールが普及したことで、それを有効活用する発想力と機動力が求められるようになりましたね。違いが象徴的に表れたのが、新型コロナウイルスの感染拡大で登校できなくなった時です。私学によっては保護者の皆さんに迅速に連絡を交わし、10日後にはオンラインで授業を再開していました。変化への対応力という意味では、小回りが利く私学の特徴が発揮されやすいように思います。
■男子校、女子校の特徴
男子校や女子校があるというのも私学の特徴かなと思うのですが。
- 森永
そうですね。関西で女子校は兵庫県に16校、大阪府に19校、京都府に6校、奈良県に3校、和歌山県に1校あります。男子校は兵庫9校、大阪5校、京都2校、奈良1校です。女子校が阪神地域に多いのは、明治期に紡績業が発達して裁縫技能を指導する女学校が創設されたことが背景にあります。キリスト教や仏教、賢人の思想、企業の理念などを基盤とした学校もあります。戦前は男女別学が主流で、戦後も受け継がれてきましたが、2000年ごろからは少子化を見据えて共学化する学校が増えています。
- 松本
少子化社会の中で生き残っていくために仕方のない部分ではありますが、単性の学校が維持されているのは、やはり私学の面白い特質です。男子がいない、女子がいないからできる教育はあるので、そこは目に留めてほしいなと思います。共学か否かで選別するのではなくて、我が子が中高6年間育つ環境の中に男子校や女子校も選択肢に入れて絞り込んでいってほしいですね。
- 森永
男子校や女子校の出身の人と話していると、私たちの年代になっても集団でよく集まっています。個人的に数人というレベルではありません。集まる人数が違います。思春期以降の人生でずっとつながっている。生涯を通じて付き合える友人がいるというのは、うらやましいなと思いますよ。
次回は1月7日に公開。関西の中学入試の動向や受験準備に入る時期、学校選びの方法について解説します。