学びのフロンティア
清風中学校・高校【第3話】
規律を大事にする理由 平岡校長インタビュー
毎日新聞社
清風といえば、毎月の頭髪検査やスマートフォンの持ち込みに対する校則があることで知られる。制服の自由化など決まりを緩和する学校が増えていくのを背景に、インターネットの口コミでは多数の批判にもさらされる。校則は何のためにあるのか。平岡宏一校長に尋ねた。【安部拓輝】
スマホより授業に集中する環境を
スマホを持ち込み禁止にしているのはなぜですか。
本校の生徒は学校で学習用にタブレット端末を使います。スマホの画面で見るよりも画面が大きい方が作業効率も良いし目への負担も少ない。ですから、学校でスマホを使う必要がないのです。小学生の時に学校でスマホは必要でしたか? 学校生活は中学や高校でも基本的に変わりませんし、小学校よりも授業の密度は高まります。スマホがなくてはならない時間はありません。学校では、学校でしかできないことをやる。これが、本校でスマホを持ち込み禁止にしている理由です。
とはいえ、家庭の事情は当然あります。仕事で帰りが遅くなるなど日常的な連絡手段として携帯が必要だということも理解しています。しかし、授業中には全く必要ありません。手元にスマホがなくても、折り合いをつけながら不都合なく学校生活を送っていけると考えています。登校時にスマホを担任が回収する学校もありますが、申し上げたように学校は何をするところかを心得ていれば預ける必要はないはずです。

呼び出しは互いを理解する機会
授業中にスマホを触っていると、どうなりますか。
授業中に不要であってもスマホに手が出る生徒には、日常生活からスマホが切り離せなくなっている心配があります。教師がそれを見かけた場合には、保護者に学校に来てもらい、三者で話し合います。それは頭ごなしにしかりつけるためではなくて、どうして授業中にスマホを触ってしまうのかを一緒に考えるためです。
そんなことで呼び出すのかと思われる人もいると思います。教員としても電話で済ませてしまいたい気持ちもあります。それでも学校に来てもらうのは、会って話すことが生徒の様子や家庭の状況などを共有する貴重な機会になるからです。学校での三者面談は基本的に成績や進路について話しますし、あとに何組も控えていますから生活面の話にまではなかなか至りません。だから、スマホとの付き合い方を入り口として対話を重ね、目指すところをみんなで共有していける時間は大事だと考えています。

保護者の代わりに生活を規定
呼び出し指導は、保護者の方々と関係性を築く機会でもあるのですね。
今年に入ってからは校長として家庭でのスマホゲームを1時間以内にするようにと立ち入ったことを呼びかけました。友人とのゲームの時間が3時間を超えており、共働きで帰宅が遅い保護者が我が子に抑制をかけられない実態もあります。いわば学校が嫌われ役を買うことで、親子共通の取り決めができます。そんな必要がない子も多いですが、生徒が2600人もいれば、そうした課題を抱える生徒もいます。何でもかんでも規則で縛るというよりも、毎日のリズムが崩れないよう保護者の代わりに生活を規定する意図があります。
「清風カット」がある理由
なぜ「清風カット」にこだわるのでしょうか。
まず前提として、本校は公立の学校とは違います。仏教の教えを基本に据えて教育する学校です。仏の教えには、よりよく生きて願いをかなえるために生活態度を整える「戒律」があります。頭髪はその一つです。髪形の流行を追わないという規定は、自分の欲望に流されない習慣を持つという戒律に由来します。月に一度の頭髪検査があるのは、髪形を保つことが仏教の戒律だからです。
半世紀以上前はもっと厳しくて生徒全員が丸坊主でしたが、先人の教師たちが議論を重ねて、襟足や耳周りを刈り上げる現在の髪形を基本形としました。学校説明会や入学試験の際にも必ず説明をして、それを理解いただいた上で入学してもらうことにしています。
とはいえ、現代に生きる私たちも戒律の柔軟な解釈に努めています。繰り返しますが、教師は決まりを設けず放任しておく方が仕事は楽です。しかし、人は接近しないと育たない。スマホを持ち込んでしまう生徒とじっくり話し合うのと同じように、学びに集中できる髪形について生徒と教師が交わり話し合う接点が「清風カット」でもあります。
ただ、本校の歴史の中で見れば、現在の基本形が完成形ではありません。時代とともに生活も変わっていきますし、流行の髪形も合理的であれば定着して不易の髪形にもなりえます。私たち教師も自身に問いかけながら、心穏やかに過ごすための戒のあり方と向き合っているところです。
