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東谷・立命館中高校長と瀧・同志社香里中高校長に聞く①
一貫教育で養う自律の力

毎日新聞社

 日本では小学校、中学校、高校、大学と年齢が上がるにつれて学校が変わる体制が主流を担ってきたが、近年は、小中一貫の義務教育学校や中高一貫、高大接続など学校種の連携が重視されるようになった。大学受験で結果を出すことに目が向きがちだが、一貫教育を通じて子どもたちはどんな力をつけるのだろうか。先駆者からヒントを得るために、幼稚園や小学校から大学までの一貫教育を実践してきた立命館中学校・高校の東谷保裕校長と同志社香里中学校・高校の瀧英次校長に話を聞いた。2週にわたって連載する。【安部拓輝】

立命館中学校・高校の東谷保裕校長(左)と同志社香里中学校・高校の瀧英次校長

■「自治自立」の同志社

 瀧校長は同志社香里中・高の出身だ。中学1年生の時が同志社の創立100周年で、同志社大学を卒業後に母校の英語教員となった。教頭を10年務め、2017年に校長に就任して9年になる。同志社は2025年11月29日で創立150周年を迎えた。中学入学から現在に至るまで50年間ずっと同志社に関わっている。
 同志社の系列校は、大阪にある香里中高をはじめ、同志社小中高、同志社女子中高(京都市)、同志社国際中高(京都府京田辺市)、同志社国際学院初等部(京都府木津川市)がある。さらに京都市内には幼稚園がある。これらは大学への推薦枠を持つ一貫教育体制にあり、園児から学生まで約4万3千人が通う。

同志社香里中学校・高校の瀧英次校長

 創立者の新島襄が掲げた建学の精神(キリスト教主義、自由主義、国際主義)は系列校で一貫している。瀧さんは「単なる知識の教授だけでなく、『良心』に基づき人格を陶冶(とうや)し、自治自立の精神を身につけた人物を育成することが教育の目的です」と語る。

■「自由と清新」の立命館

 東谷校長は大阪府立の高校で英語の教員を23年間務め、立命館宇治中高に転じてバカロレア教育(IB)の設立に携わった。その後、立命館大付属の中学・高校4校と小学校1校、全国の提携校を統括する一貫教育部に3年在籍し、2018年に立命館中高の副校長を経て2020年から校長を務めている。

立命館中学校・高校の東谷保裕校長

 同校は系列校の中で最も歴史が古く、今年で創立120周年を迎えた。立命館小と接続しており、12年間の一貫教育を実践している。立命館大に進めば16年、大学院まで含めると18年間となる。立命館の建学の精神は「自由と清新」。小学校から大学まで一貫している。「『自由』とは、責任を伴い、自身の自由を履き違えることなく、自らの意思で努力することを指します。『清新』とは、若者らしいエネルギーに満ちた、爽やかで颯爽とした生き方を意味します。学校の使命は、社会に貢献できる人材を輩出することにあります」

■一貫教育で何を育てるか

 同志社と立命館、いずれの一貫教育も生徒が自ら考えて行動する力、いわば自律の力を伸ばすことを主眼に据えている。学校生活を通じて自律の力をいかにして育成するのだろう。

 東谷さんは生徒会にその一例が見られるという。例えば文化祭では生徒会が100㌻を超える企画書を作成し、学年主任や管理職が同席する協議会でプレゼンする。「予定調和はありません。私も含めて教員は生徒たちと本気で議論します」。2024年度には学校にキッチンカーを入れる案が示された。にぎわいを生み出す効果は見込めるが、文化祭は学級で取り組んだプロジェクトを発表するための場だ。「発表を聞かずにキッチンカーに並んで食べ歩きをしたり、ごみが散乱するようなら認められない」。そう指摘を受けた生徒らは事業者と交渉して事前予約の仕組みを作り、飲食スペースの指定してマナーを共有するポスターを作り、自分たちで課題を乗り越えていったという。

文化祭で発表する生徒たち=同校提供

 修学旅行の行き先や行程も生徒が考える。教員からを指摘された問題点は、生徒が旅行会社と話し合って解決策を講じて越えていく。2023年のオープンスクールからは生徒会が「制服試着コーナー」を運営し、保護者の相談にも生徒が答える。その姿を見て「あんな中学生、高校生になりたい」と同校を志望する子どもたちは多いという。

バリ島での研修=いずれも立命館中高提供
イギリスでの科学研究旅行

 同志社香里のダンス部は2011年の「日本高校ダンス部選手権」で初優勝したのを機に高校ダンスの強豪校となったが、当時は全身が映る鏡もなく、生徒たちは互いに向かい合って振り付けを合わせていたという。瀧さんは「専門のコーチはいません。自分たちで上達の方法を考えた結果でした」と語る。現在も選曲から振付まで生徒自身が作り上げている。

同志社香里のダンス部は選曲から振付まで生徒らが創り上げる=同校提供

 体育祭や文化祭では中学校は教員のサポートを受けながら企画し、高校では全て生徒が担う。2008年からは「ラオスに学校を建てよう!」プロジェクトにも取り組んでいる=写真。バックパッカーとして現地を旅した卒業生が学校建設に向けたチャリティー活動をしていることをキャリア教育の授業で生徒たちに紹介したことがきっかけだった。2026年には3校目が設立される予定だ。遠く離れたラオスの人たちのことを思いやり、それを行動に移していくことを通じて生徒たちは「良心教育」と「自治自立」を体現している。

■中学からの積み重ねを糧に

 両校ともに高校受験で入学する生徒もいるが、二人の校長は、事例に挙げたような力は「すぐにできることではない」と語る。中学生の時から先輩の高校生が教員と議論したり、外部の事業者と交渉したりする姿を見ているから、それを見本に先輩に近づこうとするのだという(東谷さん)。高校から入ってきた生徒も、そうした生徒集団に刺激を受けて伸びていく(瀧さん)。中高の一貫教育が実現するのは、高校の教育課程の前倒しだけではない。学校生活の中でやりたいことをかなえるために自律の力を身につけ、それが結果として実社会で求められる問題解決の力を養うことにつながっていくようだ。

■立命館中学校・高校
立命館大の前身である京都法政学校が創立された1900(明治33)年の5年後に清和普通学校として設立された。2014年に京都市深草から京都府長岡京市に校舎を移転した。

■同志社香里中学校・高校
戦前の大阪偕行社が前身。戦後に「香里学園」となり、1951年に同志社と合併して系列校となった。2000年に男女共学化。

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