学びのフロンティア
四天王寺高校・中学校【第1話】
仲間と高め合う女子教育
毎日新聞社
少子化と教育価値の多様化が進む中で、中等教育の問い直しが始まっています。中学受験ナビの新企画「学びのフロンティア」は、生徒たちと特色ある教育活動に取り組んでいる学校を紹介します。今週から3週にわたって連載するのは、大阪市天王寺区の四天王寺高等学校・中学校。生徒たちの日常を追いながら同校の無類な歴史をひもとき、さらに保護者の教育参画という新たな動きを描き出していきます。【安部拓輝】
何事にも全力投球
2025年11月初旬。曼荼羅(まんだら)の天井絵が照らし出された地下講堂「和光館」に、中学1年生の歌声が響いていた。学級対抗の合唱合奏コンクールが迫っている。「あなたがくるのを待っていた楽しい仲間が集まればどんなこともできるのさ……」。歌い終わると、ホールの後ろから音楽科教諭でコーラス部顧問も務める武田有里子教諭が「めっちゃええやん! どんな練習したの?」と呼びかけた。生徒たちは目を合わせ、顔をほころばせた。本番は近い。
合唱合奏コンクールに向けた学級練習と同時に、2カ月後にある創作ダンス発表会に向けた練習も始まる。ダンスは10人程度のグループでゼロから創作し、クラスの代表になれば1月の発表会の舞台に立てる。生徒たちは冬休み明けから昼休みに練習を重ねる。このようにして、秋以降の学校生活はあっという間に過ぎていく。
同校では、オーケストラや落語などの芸術鑑賞、英語暗唱大会など年間通じて毎月行事がある。6月の体育祭は大阪城ホールで実施する。大玉運びやリレーに騎馬戦。学年対抗で下克上の真剣勝負が繰り広げられる。9月の文化祭で各学級が教室を舞台に企画する催しは細部にまでこだわる。高校の学級が催した「ジュラシックパーク」や「マリオカート」の体験コーナーには長蛇の列ができたという。
やるからには何でも真剣に楽しめる仲間がいるのが同校の特徴だ。中川章治校長は「生徒たちは異性を気にせずに何事にも全力投球で楽しみます。失敗したら『なんでうまくいかんかったんやろ』と真正面から向き合って話し合います。本校の卒業生たちはそれを『四天王寺スピリッツ』と呼んでいます」と話す。

仏教教育1400年の先に
6世紀に聖徳太子が建立した日本最古の寺とされるのが四天王寺。国の重要文化財にも指定されている鳥居をくぐり、境内に入ったところに校舎はある。同校の仏教教育は、飛鳥時代に大陸(隋)から伝来した仏教の源流でもある。中川校長は「隋の客人を乗せた船が奈良に上るために上陸するのが大阪湾。四天王寺は船旅の疲れを癒やし、日本文化の高さを示す迎賓館でもありました。船が大阪湾に近づくと、上町台地の頂に創建された四天王寺は朱色に輝いていたことでしょう」と話す。

1400年の歴史を礎として学ぶ生徒たちは登校すると、瓦ぶきの正門の先に立つ慈母観音菩薩像に手を合わせる。毎日の朝礼でも仏教聖歌を斉唱する。教室には聖徳太子の肖像画があり、604年に定められた「十七條憲法」も掲げられている。第一条の「和を以て貴しとなす」は学園訓でもある。中川校長は「勉学やスポーツを通じて自分を徹底して磨き、利他の心で人に寄り添える女性を育てていきたい」と話している。

【四天王寺高等学校・中学校】
中学入学生には英数Sコース、英数コース、医志コース、文化・スポーツコースがあり、高校入学生には文理コース、文理選抜コース、文化・スポーツコースがある。2022年に創立100周年を迎えた。中学968人、高校1324人(令和7年5月1日現在)。
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来週の第2話は「医志」とは何かを考えます。